私たちの声

解題二つ、エッセイと小説について 第一回

笙野頼子


FLJ読者の皆様
明けましておめでとうございます
本年もよろしくお願いいたします

 第一回


 今回はエッセイの解説です(次回は小説、「質屋七回、ワクチン二回」)。
 まず、「女性文学は発禁文学なのか?」と題したこれは?
 先日、赤旗寄稿者池田香代子氏のツイッターに、無断転載された「問題作」です。本来は日本文藝家協会ニュース十一月号に発表した、会員限定の読み物だったはず、ところが、……。
 ネットを見ていてふと気づいた。大変な騒動になっていました。このエッセイを今、私、著作権者から改めてここに公開いたします。
 つまり?現在私はけして池田氏の著作権侵害を追認しておりません。
 この拙作について、まだご存じでない方もいらっしゃると思います。まずお読み下さい。たった千文字の短い文ですが、これは、--現行日本国憲法の表現の自由に基づき女性の生存権と日本語の危機について、海外ニュースを主なる情報源として訴えたものです。
 今年前半、もしある法案が国会を通過してしまったら、それだけて読めなくなるかもしれない発禁文学です。


THE Japan Writes' Association News November2021 より

 お読みいただきありがとうございました(協会がきれいにレイアウトしてくださった文を池田氏は勝手に切ってつぎはぎにして掲載しています)。 

 この媒体の発行元である日本文藝家協会とは物書きのための互助団体で、会員の法益等を保護する事を目的としています。本来は著作物、推薦者等の条件を満たせば入会出来る会で、基本的に思想性等は問われません。但し、昔永山則夫さんは資格をクリアしたのに一部会員の反対で入れませんでした。思想性と言えば見沢知廉さんもここの会員でした。当然左の人もいます。但し、どのような方でも会費を三年滞納すると除名されます。
 つまりあくまでも書き手の権利を守る団体です。会員からの各種相談にも応じており、お墓や市販薬の斡旋もしてくれます。そう、会員の利益を守るための団体。
 この団体にはまず、著作権部がどーんと存在しております。最重要部署と言っても過言ではありません。そして池田氏は?
 そういう団体に自分は守られておいてこのていたらく、堂々の不法行為です。そればかりではない。同じ会員であるはずの彼女からこの私は?著作権侵害、だけではない。
 名誉毀損、業務妨害の被害を受けたと感じております。数多の被害を被ったエッセイというわけです。
 とはいえ、……。
 この著作権侵害、池田氏本人は問題であるけれど、リツイートした方の殆どは善意、何よりも純情可憐な読者様が「読めたっ」と喜び、作中の事実に言及してくれる。その姿を見ていると、結局私は笑顔になってしまう、……悪意漲る元ツイが哀れに見えるだけで。
 しかしそれでも、法益は法益、私の権利は私のもの。リツイートには感謝しつつ、元ツイ、張本人には怒るしかないのです。     
 
 まず、池田氏は拙文をすべてデマとして扱っています。なおかつ、私の完成品である文章に対し、メモ同然という誹謗を行います。さらにはこの文章が校閲を受けていないという暗示を込めて、単純な誤植をあげつらいました。が、真実はこうです。
 このエッセイに書いた内容は初稿の段階で担当に許可を得て、NO!セルフID--女性の人権と安全を求める会に(無償で)事実確認部分の校閲をしてもらっています。さらに、……。
 千文字の文は凡そ三十ピース程の事実に分けることが出来、その一ピースごとがひとつ以上の海外ニュースまたは動画、或いは国内の事実を指し示しています。
 例えば、クビ、という一語に関し、イギリスのマヤ・フォーステイターさんの裁判をひとつの事実として提示出来ます。その後に続く役職降板という単語にはナブラチロワさんの例か続きます。ところが、……。
 他人のエッセイを勝手に自分のツイッターに掲載して、誹謗中傷をまき散らすほどには機械にお強いこの池田氏が(私にはこんな「偉業」とても出来ません、もし出来てもしません)、なぜ「性自認」で検索のひとつもせずこのような振る舞いに及んだのでしょう。
 なおかつ、もしこれがひどいデマであって誰かを傷付けると思うのならば、なぜわざわざ読者の多すぎるネットなどに公開したのでしょう。
 私はこれを地味で専門家しか読まない紙の媒体に出しています。なおかつ象徴的な表現を中心に置きました。
 女が消える、と私は書きました。実際、世界各地で女という文字が消えたり言い替えで、生理のある人、子宮のある人、○○○オーナー、経血漏らし、妊婦という言葉が禁止になった国も。差別語同然の扱いです。

 それと同時に、これは象徴的比喩表現でもあります。ネットにおいて、理解出来ない知識人がいるという事に驚きました。
 性自認、魂の性別の法制化により、肉体の性別がその下位に置かれる。その結果女という言葉が使えなくなり、女体は否認され、女の定義は変えられて違う存在(雄体のままの女性自認者、推進側の言い方だと陰茎つき女性)が混じる。すると女という言葉が残っていても今までそれが正確に指し示していた存在は消えてしまう。こうして本来の女は自己を表す名前を奪われ、定義が変わることで混入した存在にとって変わられる。この新制度により女は、今まで持っていた、というかやっとかき集めた権利も歴史も全て奪われる。女は、主語も法益もリセットされ、抗弁しようにも、自分自身を表す言葉さえなくなってしまう、つまり「女は消される」。そのように警告した作品です。

 ご存じ性自認法制の恐怖について、けして人間ではなく、私は未来の新制度を批判しています。
 その他の配慮としては、これを読んで傷付く人がいてはいけないと思い、最近良く見る頭文字で表した性的アイデンティティー、希少な病名など、当事者が(読まなくても)ふと目にして、心を震わせてしまうようなアルファベットを避けて書きました。ここまで工夫してもネットに出せば傷付く人はいるかもと、躊躇しつつ、なのでまず紙で、……。
 つまりこの一文は会員限定、その全員に読み耐性があると、読後判断に迷い、心の惨劇を起こす人物などひとりもいないと、そう信じて書きました。「女を消す」という言葉の象徴性も全員理解出来て当然と思っていました。これは書き手の読む媒体だから但し、……。

 (この書き手の読む媒体においてさえも、予想外の事例がひとつありました。その方についてはお傷み申し上げますが、しかしこれは私にはどうしようもない御本人の問題。お気の毒ではあるがこの方の反応、強い不眠や異様な悲しみと拙文の存在にはおそらく一切関係がないのであろうと。なおかつ、一般の方々が私のエッセイという問題に限り、けして人権を侵害しない範囲において、この方の発言不明瞭を批判している言説等を拝見すると、なるほどもっともな、と思わざるを得ませんでした。ちなみに、私は大昔に中国語訳を一冊出しただけで別に親中派でもなく、その本も残雪さんが面白がってくれただけで既に絶版です。つまり?TPPやセルフID制はどこの国の国策であっても批判すべきと思って批判しています。また文学者は公的存在として、百年後の未来をも見据えて発語すべきと考えこれを書いています、失礼。) 

 デリケートな問題をあつかう場合、媒体を選ぶことも大切です。著作権には使用料以外の権利もあるのだと知っています。
 なおかつ、今この報道は紙の媒体でこそ必要とも思いました。つまりネットでは既に知られている情報でも紙ではまったく、報道されていませんから。
 何も知らぬままに法制化されれば本当に大変な事になってしまうのに。なお、……。

 今回このエッセイ中にある法案に関し、「議論の余地がある、なぜ闇雲な反対を」というご意見もありました。が、既に法案自体に問題があります。まず野党案から入る予定だった性自認についての、「いかなる差別も許さない」という議論不可能な文言の存在。
 この文言に加えて、「当事者が差別と感じたら差別」という運営方法、これが野田聖子氏より提案されました。そもそも差別が具体的に何かを定義出来ていな状態のままでは何も決められない。というか当事者の定義自体あいまいなままなので。心の性別?
 大体、野党と与党で用語のすりあわせが出来ていません。国会上程前でそんなレベル。
 なおかつ一般社会においては既に、国法より行政が先走りして、女子トイレの表示等が消えつつある。マスコミは真実を何も報道せずキャンペーン側の空気だけで動いている。市民はいつの間にか現実に変化が起きているのにその根拠をまったく知らされていない。こんなのでさらに法制化までしたら一体どうなるのか。また、本来自由であるべきネットにおいても、……。
 議論する事自体差別、これに関して質問する事も差別、ネットの発言さえ封じられて女の声は消される。懸念を表すだけで差別と言われている。それに味方する議員までいる。
 そんな運動に竹中平蔵、電通、ジョージ・ソロスの支援の印がある。
 福島みずほ氏は「メール一本で性別が変えられる」制度になっているとノルウェーを肯定した※1。高市早苗氏は「差別の定義が判っていない」事に疑問を呈していた※2。これでは距離がありすぎる。国会上程出来る段階なんかになっていない。ていうか、だって……。
 変じゃないですか、最初の設定が、魂の性別???
 これを?近代国家において法制化して良い問題と言えるのか?人間に肉体と分離出来る魂があるというのか?その魂にリボンの騎士のような性別があるのか?遺髪や遺骨の性別はなくなるのか?赤ちゃんや脳死の人の性別はどうなるのか?
 私は唯物論者です。なおかつ、心の性別について自分の悩みの救いとして、前世紀から作品に書いてきた人間です。(第二回で触れます)。
 私は、自分の魂は自分で持っていたい。魂を法制化してはいけない。新法の通った後に広がっているもの、それは中世の魔女狩りの暗闇だけ。心を、精神を政府に売り渡し、決めさせてはならない。

 ツイッター上では既に海外での混乱と「悪夢」が暴露されています。
 ノルウェー政府は福島みずほ氏が混乱の可能性について質問した時「性自認が大切だ」と答えたそうです(福島氏は昨年始めの挨拶動画※3でそう伝えています)。
 そんな中、今までなら「原発は大丈夫」だの「自然の放射能は少なくて無害(現行法)、原発(新法)はそれと同じ」だの言って誤魔化していたネットインテリたちも、この段階に来たら「スリーマイルで起こったことは日本では起こらない」と言うしかなくなっています。或いは「チェルノブイリは昔だから関係ない」などと。そして未来、もし何かあればおそらく枝野氏のように、「ただちに健康上の深刻な影響はない」などと言うのであろうと、……。     
 なお、もし私の文章がまったくの嘘であると本当に池田氏が思っていたのなら、「これを信じてしまう人がいるかもしれない」と思って、むしろ拡散を避けたのではないでしょうか。或いはそんな他者への配慮などまったく何もなくて、ただ私から著作物を略奪した上でネットのお仲間へ、ネットリンチに恰好の素材を与えたかっただけなのでしょうか?
 もしも正当な転載や引用が必要なら協会経由で、私への連絡はすぐについたはずです。或いは引用が許されるだけの長さの、批評的文章を書いて、引用ツイートすれは済んだことです。ねえ、……。
 たったそれだけの文、書けないはずはないでしょう?
 だって池田氏は日本文藝家協会の会員なのですから。なのにJ.K.ローリングさんから私ごとき無名作家まで、「アカの魔女」から何かを奪い取り侮辱する「正義」に酔ってしまって、お行儀の悪い事、とは言うものの、……。  
 その割りに私を批判する人物はさして出てきませんでした。
 おそらく、相手方から見ても池田氏のこれは悪手なのでしょう。ことに海外ニュースなどは一旦市民に読まれてしまえば、拙文が真実と判明してしまいます。
 私のエッセイを世間に放り出して騒ぎ立てる事は、むしろ性自認法制推進派の不利になるのでは?その上こうして、性自認法制反対派に、戦略を読み取られる結果になってしまいました。
 
 は?「エッセイ一本で大層に」ですか?でも作家が自分の著作物を勝手に奪われ望まぬ本等に入れられ、侮辱付きで売られたらどうしますか、池田氏のツイッターがご商売用のものであるかどうか私は存じませんが、何らかの利益目的で或いは悪意で、物書きが食っていけなくなる道を付けているのですよこの方は。ただね、……。
 「無断掲載事件」、ネットの近いところで見ていると大騒動に見えますが、協会への反応は殆どなかったそうです。エッセイに対する匿名のご批判一名、と言っても冷静なお電話。他には会員の方からの「もっといろいろ教えて欲しい」と言う関心を寄せてくださったお電話一件。なお、応対に出た事務局の方が後者へのお答えとして、「この寄稿は表現規制についてのご意見と考えています」と説明したところ、納得されたとか。その後さらにメールで寄稿手続き上の問題について質問一通、と批判的ご意見二通、で?私には会員三名から賛同のメールが直接もたらされました。結論?この件において。

 協会は一切どちらの肩も持ちません。何の反応もいたしません。この件はこれで終わりになっています。そもそも、根本中立の互助組織です。憲法と現行法に従うのみです。ただ会員個人の権利に何かあった時は顧問弁護士さんが相談にのってくれるとだけ聞いています(会員限定、初回無料だそうで)。
 結局この災難によって私に判った事、……。

 このような時にも、何も恐れず論理と事実を提示し、海外ニュースの記事を貼ってくださったり、それを拡散してくださったりした方々の存在。私はツイッターなどまったく出来ませんが、それでも、三年以上前から検索で知っている名前をもその中にふとまた見付けたりして懐かしく、……。
 皆様に心からお礼申し上げます。

 次回は「質屋七回、ワクチン二回」の解説と、多くの読者へのお礼、さらに……。
 昨年のクリスマス、この作品を書いたが故私の身の上に振りかかった、心凍えるクリスマス・キャンセル・サービスについてもお知らせいたします。


             続く


FLJ編集部による補足
※1、※3 福島みずほ議員による2021 年1 月21 日の動画ツイート(外部リンク) 
https://twitter.com/mizuhofukushima/status/1352146606729031680?s=20

※2 高市早苗議員のコメント内容(外部リンク)

https://www.tokyo-np.co.jp/article/132455


2022年1月22日 追記 FLJ編集部より

FLJ読者さまよりご指摘があり、見沢知廉さんのお名前を「三沢」知廉さんと誤表記しておりました。大変申し訳ありませんでした。訂正し、お詫び申し上げます。

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